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さんつね編纂 日本食紀

「ブリ起こし」とブリの旬

寒さが身にしむ季節となってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

「ブリ起こし」で、北陸地方は寒ブリの旬が始まります。祭りではなく、冬の到来を伝える気象現象です。11月に入り、シベリア寒気団の勢力が強まり、日本海沿岸に鳴り響く雷のことを「ブリ起こし」と呼んでいます。建物が揺れるほどの激しい雷鳴が轟き、風が吹き荒れ、沖も荒れ模様になりますが、北陸地方ではブリを沖からいざなう縁起の良い冬の風物詩とされています。

普通、雷と言えば夏のもので冬に鳴ることはないと思われるでしょう。しかし、北陸では冬でも雷が発生するのです。専門的には「冬季雷(とうきらい)」と言われています。
その雷鳴の大きさからでしょうか、「ブリが雷の音に驚いて富山湾に逃げ込んできて定置網にかかる」。ブリ起こしの由来を、このようにおっしゃる人もいます。
しかし実際は、ブリ起こしは天気の急変の合図でもあり、荒れた海の上層部にいる小魚が波の穏やかな富山湾に逃げ込み、それを餌にするブリも一緒に流れ込んでくるというのがどうやら真相のようです。

秋の出雲大社
秋の出雲大社

ブリは成長につれ名前が変わる出世魚の代表格で、古くから縁起が良いと珍重されており、西日本の正月には〈正月魚〉として塩ブリが欠かせないものとなっています。

養殖ものも含め通年出回っている魚ですが、天然も養殖ものも夏前に産卵期を迎えるので、産卵前の冬には栄養を蓄えており、身が引き締まり脂ものってとても美味です。冬のブリは特に「寒ブリ」と呼ばれ珍重されています。中でも北陸富山の氷見のブリが最高級のブランドとして高値で取引されています。

ブリは青魚と呼ばれる中でも非常に栄養面で優れた魚の一つです。良質なタンパク源である事はもちろんですが、それ以外にも身体に必要な栄養成分が沢山含まれているので、美味しく食べて健康な体を維持するのにとても役立ってくれる魚です。
悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす、DHA(ドコサへキサエン酸)とEPA(エイコサぺンタエン酸)が多く含まれており、骨の形成を促す働きがあるビタミンDやアルコール分解を助けるナイアシンを沢山含んでいて、お酒を飲む人には体に優しい酒のあてとなります。

今年も残すところ2ヶ月となりました。ますます忙しくなるこの季節、ブリの照り焼き、ブリ大根、ブリしゃぶなど旬の美味しいものをいただいて体力を蓄えながら冬に備えましょう。ブリの旨味が増す味噌漬けもおすすめです。

この世に生きとし生けるものは、全て自然の循環の中で命を育んでいます。「ブリ起こし」で寒ブリが獲れるのも自然のサイクルのおかげです。季節の恵みに感謝を込めて“いただきます”の気持ちを忘れずに毎日を過ごしたいですね。

神宮 秋の宇治橋
神宮 秋の宇治橋

<わたしたちは伊勢神宮・出雲大社 奇跡の両遷宮「神の宮」 増浦行仁写真展に協賛しています>

写真:増浦行仁
増浦行仁プロフィール
1963年生まれ。1981年渡仏。1983年 VOGUE(Paris)ギィ・ブルダンのアシスタントとなる。1987年サロン・ドートンヌ入賞。ルーブル、オルセー、パリ近代美術館、ロダン美術館にてポスト印象派の彫刻を撮影。1988年フランス国立図書館に作品31点が永久保存される。2002年、フィレンツェのカーサ・ブオナローティ(ミケランジェロ美術館)を皮切りに、2003~4年日本国内各地にて『GENESIS』(ミケランジェロ作品集)展開催。2006年より神宮司庁の許可を得、伊勢神宮「第62回式年遷宮」ならびに2008年より出雲大社「平成の大遷宮」の撮影をそれぞれ開始する。2013年5月に出雲大社、10月に伊勢神宮の正遷宮(神体の渡御)が行われるまで撮影に従事。これらの撮影作品は『神の宮』として国内外で巡回展を開始。同時に日本の精神文化、その自然観と伝承知による地球40億年の生命の継承を伝える「神の宮共働態」を結成。
写真集『GENESIS』『天狗の棲む山』、関連書『おれは土門拳になる~“奇跡の光” にたどり着いた写真家・増浦行仁の生き方~(村尾国士/著)』

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