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さんつね編纂 日本食紀

味が良いから「あじ(鯵)」?縄文時代から食されてきた魚

鯵の名前は、この魚を食べると非常においしいことから「味が良い魚」という意で鯵と呼ばれるようになったようです。
この説を唱えたのは、江戸時代前期の享保2(1717)年に日東の爾雅(じが)といわれる「東雅《とうが》」(語源辞典)を書いた新井白石です。新井白石の功績とネームバリューからか、今日ではこの説が広く採用されています。
他には、鯵が群れをなす習性から、群がり集まることを「あち」といい、これが「あぢ」に変わり、「あじ」になったという説があります。漢字の方の鯵にはさまざまな説があり、「魚」偏に「参」となったのは、鯵が参集する(群れる)魚だからという説が、有力候補の一つになっています。

伊勢神宮 お木曳
伊勢神宮 お木曳

まだ明るい夏の宵に、鯵を桶に入れ、棒手振《ぼてふり》が売り歩く――。冷蔵庫がない時代でも、江戸っ子は晩酌時に、生の刺身やたたきを楽しむことができたわけです。

現在では、鯵と言えばほとんど真鯵《まあじ》のことですが、伊豆諸島の特産品である「クサヤの干物」は、室鯵《むろあじ》で作られています。
生ではあまりおいしくない室鯵も、干物にすれば独特の風味が生まれます。クサヤの干物は江戸時代から有名で、これは伊豆諸島の年貢が、米ではなく塩だったことに由来しています。
水が足りず、米が作れなかった伊豆諸島では、海水を煮詰めて塩を作っていました。干物を作るのに、その大事な塩で作った漬け汁を簡単に捨ててしまうわけにはいかず、何度も使いまわすうちにいい具合に発酵して、独特の腐臭を放ちつつも癖になるクサヤの干物が出来上がったというわけです。

日本人が鯵好きなのは、鰹節と昆布に代表される、イノシン酸とグルタミン酸といった二大旨味成分が入っているからではないでしょうか。栄養学的にも、鯖や秋刀魚よりもタウリンが豊富で、コレステロールを抑え、動脈硬化を予防する働きがあります。 他にも、ビタミンA・B・Eとカルシウム、カリウムといった栄養素がバランスよく含まれているため、健康維持や美肌にも効果的です。

特に、カルシウムとビタミンB1を同時に摂取できるため、イライラが抑えられ、ストレスの軽減が期待でき、カリウムは余分な塩分を排出してくれるため、高血圧症の予防にもなります。
また、鯵の脂質には、DHAやEPAが豊富に含まれています。DHAは脳や目に良く、EPAは血液をサラサラにしてくれます。まるで、健康サプリのような魚ですね。

「生で良し、叩いて良し、締めて良し、焼いて良し、煮て良し、揚げて良し、干して良し」の鯵は海からの賜り物です。
これから最高の季節を迎える鯵を、自然の恵みに感謝しながらおいしく頂いてください。
風薫る5月、心も身体もお健やかに。

出雲大社 新緑の八雲山
出雲大社 新緑の八雲山

<わたしたちは伊勢神宮・出雲大社 奇跡の両遷宮「神の宮」 増浦行仁写真展に協賛しています>

写真:増浦行仁
増浦行仁プロフィール
1963年生まれ。1981年渡仏。1983年 VOGUE(Paris)ギィ・ブルダンのアシスタントとなる。1987年サロン・ドートンヌ入賞。ルーブル、オルセー、パリ近代美術館、ロダン美術館にてポスト印象派の彫刻を撮影。1988年フランス国立図書館に作品31点が永久保存される。2002年、フィレンツェのカーサ・ブオナローティ(ミケランジェロ美術館)を皮切りに、2003~4年日本国内各地にて『GENESIS』(ミケランジェロ作品集)展開催。2006年より神宮司庁の許可を得、伊勢神宮「第62回式年遷宮」ならびに2008年より出雲大社「平成の大遷宮」の撮影をそれぞれ開始する。2013年5月に出雲大社、10月に伊勢神宮の正遷宮(神体の渡御)が行われるまで撮影に従事。これらの撮影作品は『神の宮』として国内外で巡回展を開始。同時に日本の精神文化、その自然観と伝承知による地球40億年の生命の継承を伝える「神の宮共働態」を結成。
写真集『GENESIS』『天狗の棲む山』、関連書『おれは土門拳になる~“奇跡の光” にたどり着いた写真家・増浦行仁の生き方~(村尾国士/著)』

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